研究概要 |
ネパール建築は南アジアの建築の中でも独自の建築様式をよく残しており, 東洋建築史上にその位置づけをしなければならない. 同時にその保存が急務であり, 保存すべき建築を絞り込む必要がある. このため必要な史料的検討を行なった. まず, ネパール建築の総体を把握するため, 現存する建築502棟のデータ:建築名・年代・所在地・宗教・祭神・建築形式・修理・銘記・方杖を台帳としてデータファイルした. ここに銘文・年代記に見い出される記録を登録した. 収集・抽出の対象とした史料は, 次のとおりである. (1)HANUMANDHOKHA RAJADARBAR (2)HISTORY OF NEPAL TRANSLATED FROM PARBATYA (3)INSCRIPTION OF ANCIENT NEPAL (4)MEDIEVAL NEPAL (5)ABHILEKHA SAMGRAHA etc. これらの史料のうち, ネワール語などのものはネパールの研究者の協力を得て解読を進め, 英文に訳読されているものと併せて整理した. この整理に基づいて, 上記の建築データファイルに記事をストックした. 整理の結果明らかになった点は, まずネパール建築をデータファイルする場合に総体を形態から中庭型建築と塔型建築, 機能から仏教僧院・王宮・寺院に分類してよいことである. それぞれについて発展過程を検討すると, 仏教僧院に代表される中庭型建築は, チャルマティ・ビハーラの例などからリッチャビ朝以前の成立と推察され, その後バヒ型・バハ型から両者の混合型として3階建型を17世紀中頃に出現させる. いっぽう塔型の建築では, 宗教機能のものは, 2重から16世紀中頃に3重高基檀型, 18世紀に入り5重を出現させ, 重層化を認めることができる. 宗教機能を持たない塔は, 8・9階建の天守で18世紀に成立する. 以上の過程を捉えた.
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