滝の上(葛根田)地熱地域の現在開発中の区域を中心に、東西約6km南北約3kmの広い範囲において、約80測点で微動の観測を行い、主として振幅および卓越周波数分布から微動と地熱活動との関係について検討を行った。その結果、以下のようなことが明らかになった。 1.当地域における微動の振幅は、一般に上下成分に比して水平成分が2〜3倍大きい。また、スペクトルタイプは上下および水平成分で類似している。 2.蒸気生産基地群および滝の上温泉を中心に、白沼・葛根田林道入口・三ツ石山登山道中腹・南白沢で囲まれる範囲で速度振幅が大きい。一方、滝の上トンネル東南側および平ケ倉沼登山道入口から葛根田川下流にむかって特に振幅の小さな範囲が広がっている。 3.上記の振幅の大きな範囲では5〜15Hz程度の比較的高周波が卓越し、一方、振幅の小さな範囲では周期1.5〜3秒の脈動と推測される成分のみが見い出される。 4.速度振幅の大きな範囲は、断層が集中し、地表において噴気・温泉などの地熱活動が見い出される区域を包括している。また、微動の主たる振動源は地表下やや深部に存在するのではないかと推測される。 以上の結果から、当地域で観測される2〜15Hz程度の微動は深部貯留層から地表にむかって上昇した蒸気・熱水の流動、相変化等に起因して生じているものと推測され、地熱微動法が貯留層探査の一手段として適用しうる可能性が示唆された。 今後、測定の範囲を隣接する松川地熱地帯へ広げると共に、微動の到来方向等について調査研究を行う所在である。
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