研究概要 |
水-有機液体混合培養系の特性を利用する塩の濃縮, 分離法は用いた有機液体の回収の可否, コストバランスによりその適用が制約される. EtylamineやPropylamineは水との分離回収が容易であるが, アミン類の性質上, 対象となり得る塩が制限され, 現時点では, 基礎データは得られたものの, 有望な対象をなお検討中である. 常温近辺で下部臨界点を示す混合溶媒系の一つにTBPO(Tributylphosphin Oxide)水溶液系が知られており, アルキル基の異なる一連のPhosphin Oxideに関する実験が望まれたが, 試薬の入手が困難なため, TBPOとこれに類似のAlkyl Phosphate系について実験を行なった. りん酸エステルとしてTMP(Triethylphosphate), TEP(Triethyl-), TPP(Tripropyl-, 合成した)TBP(Tributyl-)を選び, 水-有機液体-硫酸塩系の相平衡を5-60°Cにわたり調べた. 主要な知見を以下に記す. TMP, TEPは水と完全混合を示し, TPP, TBPは何れも水との相互溶解度が小さい. 水-りん酸エステル系の相互溶解度はエステルのアルキル基の大きさに依存することから, TEPとTBPの中間的性質を示す好都合な化合物の存在が予想される. 一方, 水-TBPO系では13°Cの下部臨界温度が存在し, 相互溶解度は温度の上昇とともに減少し, 50°C以上では水相中のTBPO濃度は2%以下になる. 上述の各系に塩が入った3成分系ではすべての系で2液分離が観測され, 均一溶液域では結晶が析出し, 2液域では塩は水相に濃縮された. 有機液体の回収については, TEP-TBP-水系の相互溶解度を測定したところ, 温度変化を利用する抽出分離法の可能性を示す興味ある結果が得られ, 現在研究を続行中である.
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