本研究では、地熱貯留層及び熱水変質帯の比抵抗値と周辺岩石の比抵抗値とが20〜100倍も異なる性質に着目して、坑井のケーシングパイプを流電電極として利用し、地下の鉱体を直接的に探査する方法を提案した。 昭和61年度は、大分県八丁原地区及び秋田県鹿角地区で実施した鉱体流電法による探査データを定量的に解析して、ボーリング地点の選定を行った。その結果堀削された坑井は、八丁原地区では極めて有望な生産井となり、鹿角地区では還元井としての目的を達成した。これらの成功により、本物理探査法は、新エネルギー総合開発機構、新エネルギー財団による全国地熱調査の精度調査法として採用され、昭和61年度は北海道など全国五地域で実施され、昭和62年度以降も実施される予定である。 昭和61年度は、差分近似法に基づく3次元モデル計算のプログラムを作成し、種々の形状の鉱体が存在する場合のモデル計算の結果から、アノマリーを抽出するデータを処理法について研究した。その結果、測定された電位分布と理論モデルを仮定した場合の電位分布とから、鉱体の賦存状況が推定できる事が分った。特に、重力探査法で詳しく研究されている鉛直2次微分法は、断層などの線構造を抽出するのに極めて有効であることが分った。 一方、野外調査において、坑井からの距離が離れるとSN比が低下するために、観測波形をデータレコーダに記録し、昭和61年度に設備備品として、購入したアナライジングレコーダにより、スタッキングが可能となり、探査データの精度及び調査範囲が著しく向上した。 昭和62年度は、本年度の研究成果をふまえ、フィールド調査の能率向上を計り、調査のためのマニュアルを作成し、国際地熱研修コースなどで講義して、国内はもとより発展途上国の研究者にも、地熱貯留層の探査に極めて有効な本物理探査法を周知させる。
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