研究概要 |
弱い強滋性体及び強い常磁性体におけるスピン揺らぎ効果は、電子比熱の増大や電気抵抗の異常など低温で顕著な寄与をするが、その特性温度Tsに相当する磁場の下では凍結される。研究代表者等は、これまでR【C_(o2)】(R=ScY,Lu)、Ce【S_(n3)】,【S_(c3)】Iu,Pd-Ni等に対する低温比熱と電気抵抗の強磁場効果の研究を行ってきたが、本年度は【Hf_(1-x)】,【Z_(rx)】,【Z_(n2)】(O≦χ≦1)とTi【B_(e2-x)】【C_(ux)】(0≦χ≦0.2)の試料を各々数個づつ作成し、電気抵抗と比熱の測定を行うための準備をしてきた。これらのラーベス相化合物は、構成元素が単体ではすべて非磁性のものであるが、組成χ=0で強い常磁性で、χの増大と共に弱い強磁性へとその磁気的性質を変える典型的な遍歴電子磁性体である。しかし、こうした強磁性と常磁性の境界領域にある金属間化合物の電気的磁気的性質は複雑であり微量の不純物や欠陥によって大きな影響を受けることが多い。このため試料は作成後、走査型電子顕微鏡等で十分吟味されたが、若干の第2相の存在が認められるもののほぼ良質のラーベス相試料であることが確かめられた。そこで、零磁場で電気抵抗を測定したが、十分期待通りのデータを得ている。スピン揺らぎの強磁場効果の研究は、【Hf_(1-χ)】,【Z_(rχ)】,【Z_(n2)】系について行い、まだ初歩的データしか得られていないが、4K以下で約20%の電子比熱係数の減少が10Tで起こることを確認している。また、これら遍歴電子磁性体の物性と比較する目的で、一連のNi基合金の電気抵抗の測定も行い、興味ある結果を得ている。今後、低温比熱と電気抵抗の測定装置を完成させ、10Tまでのスピン揺らぎの磁場効果についての系統的なデータを得る予定である。
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