本年度は磁気的・電気的性質に関連し、キュリー温度、磁化、水素吸蔵、密度、電気抵抗率の温度依存性などを調べ以下に述べるような結果を得た 【Fe_2】Ceアモルファス合金のキュリー温度はドゥジャンヌ定数から予想される値よりも極めて低く、Fe中でCeが3価でなく4価として働いていることを強く示唆している。水素吸蔵により磁性が急激に強くなるが、この原因としてCeが4価から本来の3価にもどったと考えるとよく理解される。希土類を含むラーベス化合物の密度は、希土類元素の密度に対しプロットすると、きれいな直線で表わされるが、【Fe_2】Ceの密度は10数%それよりも高い値となる。この原因もやはりCeが4価としての働きがあるためと予想されれる。 希土類元素においてはスピン一軌道角運動量が大きく、【Fe_2】R1R:希土類金属元素)では低温においてアモルファス合金の場合、ランダム異方性となり一般に大きな保磁力を示す。しかしながら、【Fe_2】Ceの場合はそのような現象は全く見られない。このこともCeが3価でなくなく4価となり、上記の相互作用が消失していると考えるとよく理解できる。以上のような種々の実験事実より、【Fe_2】Ceアモルファス合金は典型的な価数揺動物質であることが予想される。なお、アモルファス合金においては、構造上のランダム性のため、平均自由行程が短かくなり、電気抵抗率が結晶の場合より、1〜2桁も大きくなるため、価数変化に伴う電気抵抗への変化は確認することができなかった。 今後は分光学を利用して直接3価←→4価の変化を確認する計画である。
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