研究概要 |
Cu-14.4Al-3.6Ni(mass%)合金の〈001〉方位の単結晶において約150℃以上の温度で現れる(応力降下を伴う)一段のステージの擬段性変形を光顕観察および二面解析などにより調べ、【β_1】母相から晶癖面【(155)_(β1)】と【(515)_(β1)】とを持つ【β_1】'マルテンサイトの2種類の兄弟晶が応力誘起され、それらの交差部分が【α_1】'マルテンサイトに変態すること、したがってその擬弾性は連続【β_1】【→!←】【β_1】'【→!←】【α_1】'変態(従来は一段の逐次変態と呼んでいた)によるものであることを明らかにした。この温度域においては直接の【β_1】→【α_1】'変態が起こらず、このような連続変態が起きる理由は、以前我々が提案した本合金の応力-温度空間における準安定状態図において、【β_1】【→!←】【β_1】',【β_1】【→!←】【α_1】',および【β_1】【→!←】【α_1】'の各変態の(仮想的な)応力ヒステリシスを考慮に入れることにより熱力学的に説明できることを示した。また擬弾性に及ぼす塑性変形効果については、Cu-(13.0〜14.7)Al-(3.0〜5.0)Niの組成範囲の合金について調べた結果、すべり変形の導入され易さは組成、熱処理および試験温度に依存すること、導入されたすべり量が大きいほど【α_1】'マルテンサイトの安定性が起き易く変態応力を低下させること、すべり変形の導入による規則度変化が変態温度の変化と擬弾性特性の劣下、ひいては各相の安定性に変化をもたらすことが明らかにされた。しかし、すべり変形の導入され易さは上述の因子だけでなく試料方位にも著しく影響を受けることが明らかになった。すなわち、試料方位が〈001〉に近ければ【β_1】'→【α_1】'変態応力が低いにもかかわらずすべり変形が導入され易く、逆に〈001〉から離れるに従がって変態応力が高くなるにもかかわらずすべり変形が導入され難くなった。このことから擬弾性特性の改善には試料方位が重要な因子になるといえる。そこで今後試料方位がすべり変形応力と変態応力に及ぼす影響とを関連づけて検討していく予定である。
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