本研究者らは、これまで小型高圧シャフト炉実験装置を製作し、酸化鉄ペレットの高圧下におけるガス還元反応の実験を行ない、還元鉄製造に関する数々の知見を得るとともに、数学的モデルによるプロセス解析の研究を行ない、とくに高圧下では還元反応のみならず、水性ガスシフト反応、メタネーション反応などの反応速度と反応熱の評価が重要であることなどを明らかにしてきた。 本研究ではこれまでの知見をさらに発展させ、これまで得られてたシャフト炉の実験データやペレット製造に関して公表されているデータに基づきエクセルギー解析の手法による製鉄プロセスのエネルギー評価を行なったものである。研究の進め方として、まず、セメントボンド非焼成ペレットにおけるセメント添加量の低減およびその物理的性質と被還元性に関する基礎的実験を行ない、ついで、還元鉄製造プロセスのエネルギー収支計算を行なった。現時点までに次のような知見が得られている。 1.工業的に必要な強度を得るため、セメントボンド非焼成ペレットのセメント添加量は約3〜4%まで低減できる。ただし、この、この値は現行法によるペレット製造の場合である。 2.非焼成ペレットの還元過程における強度は低下するものの、シャフト炉への適用は可能であった。ペレット中に含まれる水分については乾燥などの事前処理が必要である。 3.非焼成ペレットの被還元性は焼成ペレットよりも優れている。これは有効拡散保数が大きい細孔構造を有しているためである。 4.非焼成ペレットを使用した場合のペレット製造シャフト炉による還元鉄製造プロセスにおける必要エクセルギーは焼成ペレットを使用した場合の約60%であった。
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