研究概要 |
組成がほとんどCuFe【S_2】に近い天然の黄銅鉱を粒子径105〜250μmに粉砕範別したものを試料に用いた。これを内径2cm、高さ2mの鋼管製縦型反応管の上端から【O_2】-【N_2】混合ガスとともに1g/minの速度で供給した。反応管は3段の電気炉によって加熱し、管壁温度は791,903,990および1080Kの4水準とした。また、【O_2】-【N_2】混合ガスの酸素分圧は5,10,20,30kPaとした。反応管下端で採取した粒子について化学分析・X線回折・顕微鏡観察などによって検討した。 粒子の反応率は、管壁温度によっても若干変化するが、ガス流の酸素分圧とともに著しく上昇する。酸素分圧30kPaでは管壁温度によらず反応率は0.9を越えた。なお、粒子が反応管内を落下するのに要する時間は約0.8秒であり、このような短時間で反応率が0.9を越えることは、自溶炉シヤフト部における反応を検討する上で興味深い実験事実である。管壁温度によらず、酸素分圧20kPa以上の場合には、反応率は0.6以上になり、顕微鏡観察によると、酸化熱によって粒子は溶融し、球状になっていた。これらのことから、黄銅鉱粒子を落下中に溶融するためには、粒子がある程度(着火温度)加熱されたとき、十分な酸素があれば溶融するものと考えられる。 以上の実験結果に基づいて、粒子の落下途上における反応の進行について解析を試みた。まず、粒子の反応は、黄銅鉱の熱分解と過剰のSの燃焼、分解生成物であるピロタイトの酸化による粒子温度の上昇と溶融、硫化物融体の酸化などの各段階を経て進行するものとする。一方、反応速度については従来報告されている黄銅鉱粒子の酸化による脱硫速度の実験式を採用した。この他に、粒子およびガスに関する熱および物質収支式をたてて解析を行なった。現在のところ、実験結果をほゞ満足する解析結果が得られているが、速度定数についてさらに検討を要する。
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