61年度において、粒子径105〜250μmの銅精鉱粒子が高さ2mの垂直反応管内を落下する途上での酸化・溶融過程について検討を加えた。また62年度においては、粒子の溶融後の酸化反応に関して、比較的速やかに進行する反応について検討した。その結果、Fesの優先酸化、Cu_2Sの酸化によるCuの生成の他に、Fe_3O_4、CuFeO_2、Cu_2Oの生成も比較的速く、CuO、Fe_2O_3の生成速度はかなり遅いことが明らかになった。 63年度では、61年に用いた銅精鉱の粒子径が比較的大きかったので、これを平均径72μmまで小さくし、約800Kと思われる着火温度以下の低温度における酸化反応速度について検討を加えた。この実験方法は、アルミナウール中に約10mgの銅精鉱粒子を散布し、粒子表面のガス境膜物質移動抵抗が無視しうる程度の速度でガスを流し、その反応速度を測定する方法をとった。この結果から、反応率0.2以下では界面反応が、また0.2以上では粒子内のガス拡散が律速段階になり、それぞれのパラメータkおよびDeを求めた。 さらに、上と同様の粒子径の銅精鉱粒子を垂直反応管内にO_2-N_2混合ガスとともに落下させ、反応管垂直方向の3箇所でサンプリングを行い反応率と溶融状態について検討した。一方、反応速度式、熱および物質移動を考慮に入れた反応モデルを作成し、実験結果と対比させ乍らパラメータkおよびDeを決定した。その結果、粒子が反応管壁から放射伝熱によって加熱を受け、さらに粒子自体の酸化反応によって約800Kの着火温度に達した時点で、ガス流中の酸素分圧が20kPa以上であれば酸化反応が急速に進行し、粒子温度は急上昇し溶融することが明らかになった。しかし乍ら、ここで求められたkおよびDeは、上記のアルミナウールを用いる実験で得られた値よりかなり小さい値を示し、今後反応モデルについて検討する余地が残されていると考えられる。
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