研究概要 |
TiN蒸着速度を大気圧において測定した. ガスの温度及び総流量を変化させて, 高温, 小流量では物質輸送律速であり, この領域では原料ガスH_2, N_2, TiCl_4の中ではTiCl_4の供給量が最小でこの流量を多くすれば蒸着速度は促進される. また, 低温, 大流量では表面反応律速であり, 蒸着速度はPH_2^<1/2>及びPN_2^<1/2>に比例し, PTiCl_4を増加させると, 蒸着速度は減少を示した. この領域では原料ガスH_2, N_2流量は多くし, TiCl_4の流量は少なくすれば蒸着速度は促進されることが示された. Langmuir-Hinshelwood機構を用いて解析したが, TiN蒸着反応は吸着相内で, N原子とH原子が結合し, これとTiCl_4が反応してTiNを生成すると考えられる. また, 表面反応律速の条件下では吸着相内のN原子とH原子が反応する素過程が律速であることが示された. また, 実験結果より吸着平衡定数Ki, 表面被覆率θiを評価すると, オーダーとしては, KH_2=10^<-7>Pa^<-1>, KN_2=10^<-8>Pa^<-1>, KTiCl_4=10^<-4>Pa^<-1>, θH2=1-5%, θN2=0.5-1%, θTiCl4=5-50%となった. また流動法によりH_2, N_2, TiCl_4の化学吸着量を測定する実験を行なった. 試料として粉末のTiNを用いて温度は400°Cで行なった. その結果, TiCl_4の吸着量はH_2, N_2の吸着量にくらべてかなり多かった. そして, ラングミュア型を仮定した吸着平衡定数, 表面被覆率は, 上記の速度論的研究より推測された値とオーダー的に一致した. 次に, 光のTiN蒸着速度への影響について調べた. TiCl_4ガスは紫外から真空紫外領域に吸収帯を持つ. 基板温度1000K, 光源として低圧水銀ランプ(254nm)を用いた. この紫外光は石英窓を通じて基板表面に照射される. 照射密度は数mw/cm^2となる. 実験結果として, 基板に光照射した場合はしない場合より蒸着速度は小さかった. これは光照射により活性なTiCl_4が生成して活性点を占めるTiCl_4の割合が非照射の場合より増え, 律速である反応物であるN原子とH原子が活性点を占めるのを妨げたためであると推測される.
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