研究概要 |
真空溶解した純アルミニウム溶湯(99.99mass%Al)にアルゴン雰囲気中で金属リチウム(99.5mass%Li)を添加してAl-2.0mass%Li合金鋳塊を溶製した. この鋳塊をアルゴン雰囲気およびアルゴンと水素の混合雰囲気中で再溶解・鋳造して水素含有量の異なる鋳塊を得た. 得られた鋳塊は熱間圧延および冷間圧延により厚さ1mmの板にした後, エンドミルにより所定寸法の引張試験片に加工した. 引張試験片は所定の熱処理を施した後引張試験に供した. また, 引張試験片に加工するまでの途中の過程で適宜ガス分析試料を採取し, 試料の水素含有量を真空抽出法により測定した. 現在までに得られた成果の概要は次のとおりである. 1.アルゴン雰囲気, アルゴンと水素の混合雰囲気(アルゴン対水素3:1および4:1)で再溶解した鋳塊中の水素含有量はそれぞれ3.13cc/100g,3.00cc/100g,0.75〜1.50cc/100gで, 通常のアルミニウム合金より多量の水素を含むことがわかった. また, 溶解過程で鋳塊中に含まれた水素は熱処理のためにアルゴン雰囲気中で鋳塊を加熱保持しても減少しないことがわかった. 2.溶解雰囲気が異なり, したがって水素含有量に差があっても, 焼なましあるいは溶体化処理・焼入れしただけの試験片は引張特性に差を生じないことがわかった. 3.溶体化処理後473K, 24hrの時効処理を施した試験片では溶解雰囲気により引張特性に明らかな差を生じ, 水素を多量に含むものは伸びが減少することがわかった. 例えば, アルゴン雰囲気で溶解したものの引張強さおよび伸びはそれぞれ117Mpa, 17.9%に対してアルゴンと水素の混合雰囲気(4:1)で溶解したもののそれは124Mpa, 13.6%であった. また, アルゴン雰囲気で溶解し, 溶体化処理(773K,30min)を真空中で行ったもののそれは114Mpa, 20.3%であった.
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