初年度研究として、作業ワークステーションの一部として、端末・表示用にパーソナルコンピュータを設置し、以下に述べるように3次元定常および非定常境界要素凝固解析コードの開発を行った。 1.これまでの境界要素解析アプローチでは、フルの係数マトリックスを扱うため多大な記憶容量・計算時間を必要としていた。大研究では、解析に用いた基本解の特性を評価し、係数マトリックスを圧縮して解析する方法を提案し、3次元解析によりその有効性を実証した。さらに、ある範囲の時間増分値を用いることにより、反復解法によって効率良く連立1次方程式を解き、解析ステップを高速化することにも成功した。 2.より大規模な(実用的な)3次元凝固解析シミュレーションを実行するために、解析コードの全面的な改訂を実施し、スーパーコンピュータを充分に活用できるように企った。その結果、実用規模の問題で従来の計算時間を10倍以上に高速化することに成功した。 3.従来の境界要素法の定式化は、複雑な基本解のハンドリングを伴うにもかかわらず、すべてマニュアルで実行されてきた。本研究では、記号処理を利用した新しい境界要素法の定式化、解析法を提案し、2次元非定常境界要素解析への適用から、提案したアプローチがきわめて有効であることを実証した。 本研究は、さらにもう1年継続となるため、多面体モデル(幾何モデル)に基づくCADを拡張し、実用設計で対象としている複雑な3次元鋳物・鋳型形状を扱うとともに、中子・型ぬき・冷却配管などの鋳型設計も援用することを考える。また初年度で開発した3次元境界要素解析との融合をはかり、実用的な凝固過程評価を実施する。
|