研究概要 |
アルミニウム合金、特に本年度はAl-Mn,Al-Cr,Al-Mn-Cr-Si系について研究をおこなった。Al-Mn系では22at%Mn組成の準結晶が存在するが、単ロール法による急冷凝固においては6at%から22at%Mn組成範囲で準結晶の形成が確認された。示差熱分析(DTA)や示差走査熱分析(DSC)による急冷凝固相の急速加熱や凝固時の熱分析により、この系では平衡状態図よりも数十度近い温度に準結晶の準安定平衡が存在することがわかった。予想以上に少ない過冷却度で準結晶の形成が可能であることが実験的に確かめられたわけであるが、この結果は従来、過冷却度を考慮することなく急冷凝固法により作成しえていた報告に対する裏付けとなるものである。 形成された準結晶の結晶成長特性については透過型電子顕微鏡による組織観察および電子線回折による方位解析により、20面体構造を基本ユニットとして規則性をもって成長していることを明らかにした。凝固時の準結晶の形成にとどまらず、過飽和固溶体からの析出時にもその形成が可能であることの実例を示し論文として発表した。 しかし、準結晶の構造についてはまだ解明されているとはいえない。そこで、結晶解析をしやすくするために巨大準結晶の作成を試みた。Al-Mn,Al-Cr系ではせいぜい10μm直径の大きさしかえられていなかったが、Al-Cr-Mn-Si系において直径40μm以上の大きさにまで粗大化させることに成功した。今後この巨大準結晶を使って構造に関する情報を得る予定である。
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