研究概要 |
強磁性多結晶材料における結晶粒方位と磁区構造, 粒界性格構造の粒界と磁壁との相互作用に対する影響を明らかにするための基礎調査として, 本年度は急冷凝固および焼鈍されたFe-6.5mass%Si合金の薄帯多結晶試料に対して, SEM-ECP法を用いて粒界性格分布の調査が行なわれた. その結果, 急冷したままの薄帯試料では, 粒方位がランダム分布を示し, また含まれる粒界は圧倒的に(85%以上)高角度ランダム粒界であることが見出された. 一方, 急冷凝固後さらに焼鈍された薄帯試料では, 含まれる結晶粒の表面方位が, ほぼ{100}近くに局在し, いわゆる{100}集合組織が形成されていることが明らかにされた. このような焼鈍試料では低角度粒界およびΣ値の小さい対応粒界が高頻度(【similar or equal】50%)で存在することが見u『 sサ u]集 急冷凝固および焼鈍されたFe-6.5mass%Si合金薄帯中にこのように高頻度で低エネルギー粒界が存在するという事実は, 通常の方法ではその脆性のために加工されえないFe-6.5mass%Si合金が, 粒界性格分布の制御により, 換言すれば高頻度の低エネルギー粒界, すなわち粒界破壊をおこしにくい性格の粒界を導入することによって, その脆性を著るしく改善しうることを明らかにしたものである. 今後は, 粒界性格およびその分布を予め調査した試料に対して, 粒界と磁区, 磁壁の相互作用を走査電顕の磁気コントラストを用いて観察し, 磁気的強化を含まれる粒界の性格分布との関連に注目して解明してゆく予定である.
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