多結晶材料の性能を支配している結晶粒界の影響の方法および度合が、材料中に含まれる粒界の性格およびその存在頻度に大きく依存することが、最近の研究によって明らかにされてきている。最近、本研究者は粒界設計にもとづく材料開発の考えを提案してきている。本研究はその粒界設計の考えにもとづき、多結晶磁性材料の諸性質のうち、とくに材料開発に際してしばしば障害となっている、粒界破壊に関連した脆性の制御の方策を見出すために行なわれた。まず、粒界破壊に対して大きな抵抗をもつ低エネルギー粒界を人為的に高頻度で多結晶材料中に導入することをめざして、Fe-10%Co合金の真空溶解後、鍛造圧延された板状試料を磁場中焼鈍を行なった。その結果、低エネルギー粒界の一種である低角粒界の頻度が磁場中焼鈍によって磁場の強さに直線的に比例して増加することが見出された。一方、その脆性のために通常の加工法では製造されなかったFe-6.5%Si合金が融体より双ロール法によって急冷凝固され薄帯として成形され、さらに焼鈍されることによって非常に延性に富んだ材料となる。この理由を明らかにするため、粒界の性格および頻度がSEM-ECP法を用いて調査された。その結果驚くべきことに、高延性を示した急冷凝固後十分に焼鈍された薄帯が高頻度(【similar or equal】45%)の低エネルギー粒界を含んでいることが見出された。このことから急冷凝固焼鈍されたFe-6.5mass%Si薄帯の優れた延性は、粒界破壊を起こしがたい低エネルギー粒界が高頻度で存在することによることが明らかにされた。また、低Σ対応粒界の存在頻度とΣ値との間に逆る乗根則が見出され、特定のΣ値をもつ対応粒界の出現頻度を定量的に制御する可能性が明らかにされた。本研究者の提案した粒界設計にもとづく材料開発の考えに従って、望みの性質、性能をもった多結晶材料の開発が可能であることが実
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