研究概要 |
本研究では主としてAl及びその合金とGFRPを主な供試材とし、今後益々その重要性を増して来るであろう極低温下における構造材,機能性材料その他としての順応性、信頼性等について、各種力学的諸特性の面から評価を試みた。それによると、77K以下の温度における、高純度のAlを含む純Al及び5083合金の力学的特性,変形,破断機構に対する温度の影響の面では、転位密度の高い試料程、変形に対する熱活性化要素がより大きく表われ、またこの様な傾向は、純度の高い程、より顕著であった。工業用純Al板の引き裂き破断挙動を5083合金と比較すると、前者は吸収エネルギーが試験温度の低下と共に直線的に増大するのに対し、5083合金は123-173K以下で低下し、極低温下における脆化傾向が晶出物、析出物等の脆化傾向によって大きく影響されることを確かめた。組織と、極低温条件下における脆化傾向との関係を別の面から更に検討するため、均質化処理を施した5083合金連続鋳造塊と、これに約8%,17%減面率相当の冷間加工を与えた試料の衝撃破断の吸収エネルギーを比較した所、後者は、前者の約1/2-1/4に迄低下した。GFRP材についてもその極低温条件下での力学的特性について静的引っ張り、引き裂き両試験の他に動的衝撃曲げ試験による検討を重ねているが、引っ張り特性の面では破断係数は試験温度に大きく依存しない事、切欠き付き試験片の応力集中係数は、丸穴付き試験片の約2倍の値を持つが、切欠き付き試験片の最大応力はそれと比例して低下しない事等を明かにした。また、荷重-変位曲線からき裂発生荷重を求め、破壊靭性値を求めた所、試験温度に対して殆ど依存性を示さない事の他、金属材料で一般的に認められる、強度の増大に伴う破壊靭性値の低下は無く、むしろ強度の増大と共に破壊靭性値も増大する傾向のある事が確かめられた。
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