研究概要 |
本研究では5083A1合金とGFRP複合材料とを主な供試材とし, 前年度(61年度)に引続き, 今後益々その重要性の増大が考えられる極低温条件下における構造材, 機能性材料その他としての順応性, 信頼性等の観点から各種力学的特性について評価を試みた. それによると, 77K近傍もしくはこれ以下の温度におけるA1合金, 特に5083A1合金の組織と力学的特性, 変形破断機構等との関係は極めて微妙であり, 今回主として検討を加えた均質化した連続鋳造材と, 均質化しない連続鋳造材との比較によれば, 均質化処理したものは特に低温において安定した特性を示し, 77K近傍において高い降伏比を示す等, 微細組織の析出と, 応力の分散効果との明確な対応性が示された. また, 活性化容積等の評価からもこれを確認出来た. 一方, GFRP複合材料については, 低温条件下での力学的特性を, 静的引っ張り, 引き裂き試験の他, 動的衝撃曲げ破断, 静的曲げ破断試験等により多面的に検討を加えている. 複合材の静的強さの検討では, ガラス繊維束の強度に対し単繊維としての補正を加える事で見いだし, また, 弾性論的に求めた応力集中係数から複合材料の切欠き強度比を求めると応力集中係数から予測される値に比し30--40%高い値を示すことを確かめ, その理由を考察したGFRP複合材料の破壊靱性試験による破壊靱性値に対する初期スリット幅の影響等, サイズ効果に付いて検討したところ, 初期スリット幅の大きい程破壊靱性値が増大する事, また試験片幅対厚さ比が0.2以下では平面応力状態になり易く, また破壊靱性値も大きくなり, 更に同一サイズの試験片の場合, 低温程平面応力状態になり易い事等確認した. 更にGFRP複合材料の破壊靱性値は, その構成材料の一つであるガラス繊維の力学的挙動に大きく左右される事を見出した.
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