研究概要 |
金属を急冷凝固させることはアモルファス金属作製の手段であるのみならず, 結晶質合金に対しても結晶粒の微細化, マクロ偏析の除去, 固溶限の拡大, 準安定相の形成などにより, 顕著な性質の改善をもたらすことが報告されている. それゆえ, 急冷凝固が結晶質合金に与える効果を詳細に検討することは, 新たな鉄鋼材料開発の上で非常に有益であると考えられる. 本研究では鉄合金の中でも代表的なFe-Cr-Ni合金を取り上げ, 急冷凝固材の組織の特徴を観察した. また急冷凝固ままで2相組織を有する合金については組成による組織の変化を詳しく観察した. 得られた主な結果は次の通りである. 1.良好なリボンを得るには3%以上のCrの添加が必要である. 2.リボンの集合組織はその組織と良い対応がある. 3.板厚はロール周速の-0.6乗に比例する. 4.凝固ままの組織はα単相, (α+γ)2相, γ単相のいずれかである. (α+γ)2相域は液相面の谷によりCr側に存在する. 5.αとγの割合は狭い組成範囲で変化する. 特に板厚が30μmの場合には, 0.2%の組成変化で主な相が変化する. 6.板厚が薄くなると共晶凝固は認められなくなる. 7.板厚が厚い場合は粒径と組成によりあまり変化しないが, 板厚の薄い場合2相混合組織のとき, 粒径は最も細かい. 8.板厚の薄い場合, αからγへ相が変化する組成でαとγの凝固核が同時に生成する競合凝固が起こる.
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