固溶強化の大きいAl-Mg合金に粒子を分散させた合金について高温変形機構を検討した。 1.Al-Mg-Fe合金 Al-5%Mg固溶体合金中にFe【Al_6】粒子を分散させた合金について高温変形挙動を調べた結果、高温強度及び他の高温変形特性はAl-Mg固溶体合金とほぼ同じであり、粒子分散による強化は見いだされなかった。TEMによる組織観察の結果、Fe【Al_6】粒子は球状で微細であった。Al-Mg合金のように高温変形において転位の粘性的なすべり運動が律速過程である場合、微細な粒子は転位の上昇運動によって容易に乗り越えられるため、いわゆるオローワン過程による転位の粒子通過機構は仂かないと考えられる。このためAl-Mg-Fe合金では粒子分散による強化はほとんど見られなかった。 2.Al-Mg-Ni合金 転位の上昇運動による分散粒子の通過を抑制し、オローワン過程による分散強化を図るため、粒子の形状を繊維状とし、アスペクト比の大きい粒子を分散させた。一方向凝固Al-5Mg-【Al_3】Ni合金を作製し、その高温変形挙動を調べた。その結果、Al-Mg固溶体合金と比較して、高温強度は著しく上昇し、その強度上昇は【Al_3】Ni粒子の間隔より計算したオローワン応力とほぼ等しくなった。この結果、Al-Mg合金では分散させる粒子の形状及び分布が高温強度と高温変形挙動に大きく影響を与えることが判明した。またAl-Mg合金のような転位の粘性的な運動によって変形が律速されている、いわゆる合金型の合金では粒子分散強化として粒子を繊維状に密度を大きく分布させることが高温強度の向上に有効である。
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