研究概要 |
研究目的:優れた超電導特性を有するA15型化合物の一つであるV_3Si相中のSi原子の一部をN,C,Bなどの原子半径の小さい元素で置換したV_3(Six,Ny)系, V_3(Six,Cy)系およびV_3(Six,By)系化合物を作製し, 臨界温度Tcのより高い超電導体を開発するとともに, A15型化合物超電導体のTcに影響をおよぼす重要な因子を実験によって明確にする. 研究成果:初年度には, まずSi濃度が約18〜25atまで種々に異なるV_3Si二元素化合物を低圧アルゴンガスプラズマ溶解法によって作製した後得られたボタン状インゴットから試験片を切り出し, V_3Si相中のSi量をEPMAで分析し, V_3Si相のTcにおよぼすSi濃度の影響を調べた結果, 1200°CにおけるV_3Si相中の固液Si量は約20〜25at%であり, そのTcは25at%Siで最も高く, 約17K, そして, Si量が化学量論組成から減少するにつれてTcは低下することが明らかとなった. また, N,C,B原子をそれぞれV_3Si相中へ固溶させることを試みた結果, BおよびC原子を固溶させることに成功し, N原子を固溶させることには成功しなかった. 次年度には, 主としてV_3Si相へのボロン添加の影響をTc, 格子定数, 規則度との関連において調べた結果, 約0.5at%のボロン原子がV_3Si相へ固溶することによって, V_3Si相のTcは約1〜5K上昇した. Tcの上昇量はSi量が化学量論組成から減少するにつれて増大し, 19at%Siの約5Kであった. またボロン添加はV_3Si相の格子定数をSi量に関係なく約0.13%低下させた. さらに, ボロン添加はV_3Si相の規則度Sを低下させ, この規則度の低下量はSi量が化学量論組成にあるとき, 最も大きく, Si量が減少するにつれて規則度の低下量は少なくなり, 19at%Si量のとき, 規則度の低下はほとんどみられなかった. 格子定数の低下はTcの上昇をもたらし, 規則度の低下はTcの低下をもたらすことが明らかとなった.
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