研究概要 |
本研究費の主要設備である画像処理装置を利用した研究を, 当初の計画通り, 2種類の材料について行なった. すなわち, 鋳鉄については, 球状黒鉛の高温延性に関する研究を終了し, ベイナイト変態時の変形の研究を行っている. 前者に関しては, (1)673Kで生じる粒界破壊は, 黒鉛体積率が大きくなると抑制され, 黒鉛粒径の影響を受けない. (2)本脆性はフェライト粒径の微細化によって抑制される. (3)球状黒鉛鋳鉄の応力緩和速度は, 片状黒鉛鋳鉄の緩和速度にくらべて著しく遅い, 等の結論が得られた. 後者に関しては, 画像処理法とX線回折法を用いたベイナイト組織の定量化の研究を行なった. 得られた結論は, (1)ベイニティック・フェライトの間隔はオーステンパー温度が高いほど大きくなる, (2)伸びと降伏応力の最高値は, 残留オーステナイト量とベイニティック・フェライト量の和が最大になるオーステンパー条件の近傍で現われる, である. Al-Al_3Ni共晶合金の研究に関しては, 主として, 一方向配列組織材料の冷却あるいは加熱後の残留応力に関する研究と鋳造, および焼結合金の強化に関する研究を行なった. 得られた結論は, (1)冷却あるいは加熱後の残留応力は, Al_3Ni繊維間隔の影響を受け, その結果, 複合材料の変形応力は, 繊維間隔の影響を受けた残留応力を含んでいる, (2)これらの現象をシミュレートする計算モデルを考え, これが実験結果をよく説明することが明らかになった, 等である. 後者に関しては, (1)溶湯鍛造したAl-Al_3Ni合金を粒状化焼鈍することによって, 延性を改善することができるが, これにMgを添加すると, 添加量の増加にともなって, 焼鈍の延性改善効果が弱まる, (2)鋳造材, 焼結材を含めて, Al_3Ni相の等価楕円軸比が1に近づくほど延性が改善される, である.
|