アーク溶接の自動化の基礎研究として、外乱に対してあるいは母板厚さなどの溶接パラメタの変動に対して溶融池を制御する問題は、1つの重要な課題である。溶融池形状を制御するためには、パルス電流を用い、その波形を制御することが有用である。ここでは、MIG溶接においてパルス電流を用い溶接池を観察しながら電流波形によって溶融池を制御する視覚ロボットを構成する。従来、アーク光が強すぎるので、TVカメラを用いて溶融池形状を明瞭に観察することは困難であった。まず著者らは溶接電流を周期的に低くし、その時間に低残像のCCDカメラを用いて溶融池を観察することを試みた。溶融池現象のデジタル制御において操作量として電流波形を考え、制御量として溶融池幅、溶込み深さがあげられるが、両者の電流変化に対する動特性が近いので、両者の良好な過波応答を得るためにまず溶融池幅を制御した。つぎに溶接金属が要求される機械適諸特性を有するためには、適正な冷却速度のもとで溶接を行うことが必要である。この冷却速度に強く影響する因子は熱入力であり、ここでは熱入力の制御は溶接電流による。板厚の変化あるいは母板の支持物との接触状況による予測しがたい熱電動の変化にもかかわらず冷却速度を改善するために、溶融池幅あるいは面積の制御を行った。このために溶融池の調節器としてモデル規範適応制御を適用した。母板厚などパラメータの変化する場合の溶接実験を行い、適応制御の妥当性について確かめた。 母枝を持物への熱伝導が変動する場合の溶融池現象を観察し、溶融幅制御により溶込み深さを制御する問題を取り上げた。さらにI開先を検出し、開先の変動に適応して電流波形を制御し、ワイヤ溶着量と母板溶融量を制御し、I開先の変動にかかわらず溶込み形状(溶融池幅および深さ)を一定に制御する問題について考察した。
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