研究概要 |
ステンレス板を基板としその上にアルミナをプラズマ溶射したセラミックスコーティング材に生じる残留応力を実験的におよび理論的に検討した。 1.セラミックスコーティング材のセラミックス膜上に抵抗線ひずみゲージを貼付し、ザックス法により残留応力を計測した。しかしこの方法では切削による温度変化が非常に問題となることが明らかとなった。すなわち異種複合材ということで切削中のわずかの温度変化でも材中の残留応力が再配分され、切削条件により残留応力分布が異ってくることが明らかとなった。そこで切削による温度上昇をさけるためザックス法をあきらめ腐食法により残留応力を測定した。すなわち過塩素酸とエチルアルコールの混合液中で電解研磨することによりステンレス板を削除し、残留応力を測定した。この方法では温度上昇はほとんどなく、また外力を全く加えないため非常に安定した再現性のある結果が得られた。 2.実験の結果セラミックスコーティング材の場合、同じ溶射条件(例えば溶射電流500A,電圧63V,距離120mm,膜厚1mm)であっても、セラミックス膜に生じる残留応力は基板の厚みによって引張応力になったり圧縮応力になったりすることが明らかとなった。すなわちステンレス基板が1mmの場合には約300MPaもの引張残留応力が生じ、この場合は残留応力のみでセラミックス膜に割れが生じることがある。一方基板が3mmの場合では約60MPaの圧縮残留応力、5mmの場合では約200MPaもの圧縮残留応力が発生していた。 3.セラミックスコーティング材に対しての弾性熱応力理論解析を行い、コーティング材に生ずる残留応力におよぼす各種パラメータ整理を行った。そしてそのパラメータを用いると上述の実験結果が定性的ではあるが合理的に説明できることが明らかとなった。なお本年度は溶射中の過渡的熱応力について検討する予定である。
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