研究概要 |
溶接継手の品質を一層向上させ、ロボット等による制御溶接についての基礎資料を得るため、高張力鋼の多層盛溶接熱影響部の組織分布を制御し、靭性の向上をはかるための基礎的な実験、検討を行った。この際、熱影響部においては、いわゆる粗粒域がフェライト・オーステナイトの2相域に再加熱されて形成された組織が最も低靭性であることをすでに明らかにしているので、このような組織を中心として、その性質や分布状態を制御するという方向で検討を進めることにした。 本年度で得られた主な成果は次のとうりである。 1.溶接熱影響部の目標とする組織からの破壊の発生特性を調べるために、き裂長さを制御できる簡易型疲労予き裂導入機を製作した。これは、3点曲げ方式で、試験片のたわみをひずみゲージをセンサーとしてリアルタイムに計測し、これが設定値に達するとき裂導入を停止させるものである。精度的には改善の余地は残したが、これを用いることにより、ほぼ目的の位置に予き裂先端を位置させた試験片を作成することができた。 2.種々の組織からの破壊の発生、伝播特性を測定するための計装化シャルピー試験システムを製作した。これは、ハンマーに取りつけたゲージからの出力をデジタル・メモリスコープに記憶させ、このデータをパーソナルコンピュータに取り込み、対話方式で破壊の発生や伝播に要するエネルギ、最大荷重値等を算出するものである。 3.上記1,2の装置により、溶接熱影響部の種々の組織中に疲労予き裂先端を有する試験片について計装化シャルピー試験を行った結果、前述の、2相域への再加熱により形成された組織からのぜい性破壊の発生が、他の組織にくらべて著るしく容易であることが判明した。
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