研究概要 |
本研究で得られたニオブ定量の最適実験操作は次の通りである。フッ化水素酸で溶解してから硫酸を加えて調製したニオブ(【V】)試料溶液を、内径約2cmのテフロンクロマト管にアマルガム化した亜鉛粒を約30cm詰めたジョーンズ還元器中に移してニオブを3価に還元する。還元器から流出したニオブ(【III】)溶液は、電解液中に前もって加えておいた鉄(【III】)と反応して鉄(【II】)を生成する。硫酸々性の硫酸マンガン(【II】)-フッ化カリウム電解液中;白金陽極で電解発生させたマンガン(【III】)フッ化物錯体でこの鉄(【II】)を電量滴定する間接法によりニオブ量を求める。滴定終点の決定は定電圧電流法による。 まず、還元の際の硫酸濃度について検討した結果、硫酸濃度の上昇とともに還元能力の増加が認められた。また、ニオブ溶液を還元器内に数時間保持してから流出させることににより充分に還元されることを見い出した。 実際に市販のニオブ粉末(表示値99.9%)を純度測定した。3M硫酸を用いて2.5時間還元器内で保持した場合、ニオブ量が40mg程度までは完全に還元され、得られた純度平均値は99.85%であった。6M硫酸を用いて5時間保持した場合には、3M硫酸の場合に比べてかなり多いニオブ採取量でも充分還元が行われたが、採取量が100mg程度になると還元能力はいくらか低下した。そこで、採取量を75mg以下とし、得られた純度平均値は99.62%であった。いずれの場合も、相対標準偏差は約0.2%,空試験値はニオブ量として2〜3mgであった。 ジョーンズ還元器によるニオブの還元は不完全であると言われ、微量のニオブへの応用しか報告されていない。本研究では、加水分解,空気酸化などを防ぐことで常量のニオブでもかなり満足な結果が得られ、ニオブの精密定量法の開発はほぼ達成できた。(本年6月,日本分析化学会第48回分析化学討論会において発表の予定)
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