研究概要 |
ジョーンズ還元器を用いて5価のニオブを3価に還元した後鉄(III)と反応させ, 生じた鉄(II)を電解発生させたマンガン(III)フッ化物錯体で電量滴定する方法がニオブの定量に有効であることを前年度に明らかにした. しかし, ニオブ量が50mg以上になると還元に問題があるなど, まだ最適還元条件を確立するまでには至っていなかったので, 本年度も継続して還元条件について検討を加えた. まずジョーンズ還元器の長さ(亜鉛アマルガムの量)を前年度の約2倍, 還元器内でのニオブ溶液の保持時間を約16時間に増やしたところ, 完全に還元できるニオブ量にかなりの増加がみられた. しかし, それでもニオブ量が80mg前後になると還元能力が低下することがあった. 次に, ジョーンズ還元器を約3倍の長さに, またセル中の溶液量を300mlから500mlにしてみたが, 約70mgのニオブ量でも低値の得られることがしばしばあった. これは還元能力の低下によるものではなく, 還元器の長さを約2倍(亜鉛アマルガムの量は約600g)にもどし, セルの容量を500mlに増やした. この還元条件下で, 市販のニオブ粉末(純度表示値99.9%)を純度測定した結果, 平均値99.95%(相対標準偏差0.07%)と極めて満足できる精度と正確さが得られた. 以上から, ニオブの還元中に還元器内で発生する気体によって試料溶液の回収が不完全にならないように, 還元器からカラム洗浄用希硫酸を多量に流出させればよいことが分かった. 一方, スズは金属アンチモンを詰めたカラムに通して2価に還元後, 電量ヨウ素滴定法により精密定量できることが確認できた. 実際に高純度スズ試料の純度測定に応用した結果は満足できるものであった.
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