前年度までに開発の見通しが得られた常量のニオブの間接電量滴定法を金属ニオブの純度測定に適要し、ばらつきはいくらか大きいもののほぼ満足な結果が得られた。次に、ニオブとスズを混ぜた合成試料をニオブの定量条件下で分析したところ、ニオブ定量へのスズの影響はほとんどなく、共存するスズの化学的前処理操作は不要であることが分かった。 スズの精密定量法に関しては、空試験値の求め方などの問題点を明らかにし、従来の操作よりも1けた精度を上げ得るような方法を考案した。すなわち、アンチモン還元カラムからスズ(II)を電解セルへ導入する前に電解液を予備滴定し、またカラム洗浄液を流出している間に、還元流出したセル中のスズ(II)が再びスズ(IV)に酸化されるのを防ぐため、洗浄液を流出させている最中に電解を開始した。この方法を、実際に金属スズ試料の純度測定に応用し、かなり満足な結果が得られた。 次に、V_3Gaの構成元素であるガリウムの定量について検討した。ガリウムを純度既知で高均一度なEDTAの一定過剰量と錯形成させた後、過剰残留部のEDTAを電解発生させた亜鉛イオンで電量逆滴定する方法は既に報告したが、滴定終点が不明瞭、空試験値が大きいなど分析結果の不確かさはやや大きかった。これについては、亜鉛イオンの代わりに、カドミウムアマルガム陽極から溶出させたカドミウムイオンを滴定剤として使用すればよいことを見出し、カドミウムイオンの電量発生効率などを測定した後、金属ガリウムの純度測定を行い、約0.10%の相対標準偏差が得られる方法を開発した。 実際に超伝導化合物の不定比組成を精密測定するまでには至っていないが、一応本研究の所期の目的を達成できる見通しは十分得られている。また、超伝導材料の構成元素として重要なゲルマニウム、バナジウムなどの精密電量滴定法の開発に関しても研究を展開する。
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