研究概要 |
強誘電体材料は、原料粉末から固相反応を利用して製造されることが多いが、この反応機構はきわめて複雑であり、目的とする材料物性を得るために焼成条件にさまざまな経験的工夫がこらされているのが現状である。本研究では、この種の結晶における遂次相転移現象、なかでも強誘電相およびインコメンシュレート相の発現に注目し、熱化学的立場から試料調製条件がおよぼす影響を調べ、キャラクタリゼーションのための基礎的研究を行った。 六方晶プロトタイプの圧電結晶であるBaZnGe【O_4】を、高純度原材料粉末Ba【CO_3】,ZnOおよびGe【O_2】から種々の焼成温度で調製した。得られた試料について、SEM観察,粉末X線回折,DTAおよび誘電率測定を行った。焼成温度の上昇とともに焼結が進行して粒成長することが認められ、X線回折では不純物による回折ピークが減少した。1450K以上で焼成した試料ではBaZnGe【O_4】のみとなった。これは【I】-【II】相転移のDTAピークにも現れ、熱異常の大きさはBaZnGe【O_4】の生成率に比例した。これに対して低温の【IV】-【V】相転移では、熱異常は生成率に比例せず、融解して完全な結晶となった試料についてのみ最大の熱異常が現れた。誘電率測定でも同様の現象が見られ、【I】-【II】相転移は不純物の存在によらないが、【IV】-【V】相転移はインコメンシュレート構造が関与し、結晶の欠陥やひずみなどにも鋭敏に影響されることがわかった。B70Kにおいて焼成時間を変えて試料を調製し、反応進行度が時間の1/2乗に比例することを見い出した。さらに化学量論比からわずかにずらせた原料を融解して調製した試料について、副生成物が相転移現象におよぼす影響を調べ、熱分析がキャラクタリゼーションの有効な手法となり得ることを示した。またBaTi【O_3】についても同様の研究を進めた。断熱型熱量計の製作を完了し、精密熱容量測定も行った。
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