研究課題/領域番号 |
61550569
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
木野村 暢一 山梨大, 工学部, 助教授 (50029732)
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研究分担者 |
熊田 伸弘 山梨大学, 工学部, 助手 (90161702)
武藤 文夫 山梨大学, 工学部, 教授 (10020380)
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キーワード | インターカレーション化合物 / リン酸塩 / 層状化合物 |
研究概要 |
本年度は、電気的に中性な層からなる構造のピロリン酸オクソタングステン(【WOP_2】【O_7】)のWイオンを化学的に還元し、層に生じた負電荷の量にに対応した量の陽イオンが化合物の電気的中性を保つため層間に入ったインターカレーション化合物の合成を行った。この時、還元の程度を制御することにより、層間の陽イオン量を任意に調節することを試みた。 出発物質の【WOP_2】【O_7】は、【WO_3】と【(NH_4)_2】【HPO_4】の粉末の混合物を、約250℃でアンモニアを分解させた後、650℃で加熱することにより合成した。還元剤として用いたのは、【Na_2】【S_2】【O_4】、Sn【Cl_2】および金属Znなどであった。【Na_2】【S_2】【O_4】は、0.1〜1Mの濃度範囲の水溶液とし、Sn【Cl_2】は0.1Mの塩酸酸性の水溶液とし、室温から90℃までの温度範囲で、1〜48時間の反応を行った。Znによる還元は、Zn粉末と出発物質との混合物に塩酸を流す方法で行った。 いずれの還元剤を用いても、生成物の層間距離は出発物質のそれよりも増加しており、化学分析等の結果により層間に陽イオンと水の入ったインターカレーション化合物【A^(m+)】【H_y】【[WOP_2O_7]^((mx+y)-)】・n【H_2】Oが生成したことがわかった。【Na_2】【S_2】【O_4】で還元した場合には、生成物は【Na_x】[【WOP_2】【O_7】]・【nH_2】Oであり、xの範囲は1.4〜0.8であった。層間距離は、10.8〜11.5【A!°】であった。また、Sn【CH_2】によっては【Sn^(2+)】Hy[【WOP_2】【O_7】]・【nH_2】Oが生成した。(2x+y)の値は0.46〜0.80の範囲で変化したが、層間距離は合成条件により変化せず12.2【A!°】であった。金属Znによる還元では、還元量がSn【Cl_2】の場合と同程度ものが得られた。電価1価当りの占める面積は、【Na_x】[【WOP_2】【O_7】]・【nH_2】O(x=1.41)において13【A°^2】で、Sn【Cl_2】による還元によっては39【A°^2】のものが得られた。これは粘土鉱物に匹敵するものであり、【WOP_2】【O_7】を出発物質としたインターカレーションにより広い範囲で電荷密度を制御できることがわかった。
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