BaTi【O_3】粉体試料をキュリー点以上に加熱したのち、直流電界を印加しながら室温まで下げ電圧の印加方向に自発分極した試料を作製した。このようにして得た試料に対し、直流電界を印加した状態で極性物質を吸着させる。外部電場の強さを変化させることにより、BaTi【O_3】粉体表面の電場強度をコントロールし、吸着力制御の可能性について検討した。 1.BaTi【O_3】の粉体表面には、水蒸気の化学吸着によって形成された表面水酸基や、炭酸ガスの化学吸着にもとづく炭酸イオンが存在し、BaTi【O_3】本来の表面状態ではなかった。試料を1000℃で脱気したのち【O_2】雰囲気下で1hr処理することにより、これらの化学吸着種は除去できた。 2.BaTi【O_3】を電界冷却法により処理すると、印加した電界方向への自発分極量は約8割増大した。 3.BaTi【O_3】粉体に外部電場を印加した状態でCH【Cl_3】を吸着させると、外部電場を印加しない時の吸着量よりも増大した。またおのおのについて吸着熱を測定すると、外部電場を印加した場合の方が約2Kcal/mol吸着熱は増大した。これらのような吸着性の差異は、外部電場の印加により、格子イオンの偏位が起こり表面電場が増大したため起こったものと解釈される。すなわち双極子モーメントを持った吸着質は、その双極子を表面電場に配向しながら吸着していると判断される。したがって印加する外部電場の強さを変化させることにより吸着力の強さを制御できる可能性を見い出したといえよう。今後は、さらに自発分極量の増大、吸着力の増強を検討したい。
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