研究概要 |
γ-シクロデキストリン(γ-CD)は, グルコース8単位から構成されており, 大きな空孔を有している. 修飾残基として芳香環を有するγ-CDでは, 芳香環が空孔内に入り大きなγ-CD空孔を狭くするスペーサーとして機能するが, スペーサー残基の大きさ, 形状を調整すると残余空隙の大きさ, 形状が相補的に定まりデザインできる可能性がある. 本研究では, 修飾残基の個数, 大きさを変化させて, スペーサー相補性の原理が成立つか, また, どのような包接挙動が芳香環修飾γ-CDで見られるのかについて検討した. 1.1点修飾γ-CD:アントラセンあるいはピレン1個を有するγ-CDは, 2分子会合しやすいことが明らかになった. UVスペクトルの濃度依存の解析より会合定数が求められた. また, ゲスト添加に伴なうUVスペクトルの変化から, これらγ-CD誘導体が会合状態を解消して1:1ホスト・ゲストコンプレックスを形成することが明らかになった. また, ピレン修飾体の会合体は顕著なエクシマー蛍光を示し, 会合により形成される長い空洞内にピレン残基が2個収容されることが判明した. しかし, 広い口にピレン残基を有するγ-CD誘導体では, エクシマー形成は無く, ピレン環はCD軸に直角に配向して存在すると推測さた. 2.2点修飾γ-CD:アントラセン残基2個を有するγ-CDのAB, AC, AD, AE異性体を合成した. これらは, 円偏光二色性スペクトルに明確なエクサイトン・カップリングパターンを示し, 2個のアントラセンがγ-CD空孔内で相互に捩れた関係で配向していることが明らかになった. ゲスト添加による円偏光二色性パターンの変化から結合定数を求めた結果, ACが最大, AEが最小の値を示した.
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