研究概要 |
1-ピレンブタノイル残基を有するγ-シクロデキストリン(γ-CD)誘導体を合成した。それらは、γ-CDの一級水酸基側にアミド(1__-)、エステル(2__-)結合したもの、および、二級水酸基側のC_2(3__-)、C_3(4__-)部位にエステル結合したものであり、ピレン環とγ-CD空孔の相対的位置および立体化学的関係について円偏光二色性および蛍光スペクトルによる解析を行った。その結果、一級位修飾体ではピレン環はγ-CD空孔内にアクシャルに包接されること、および、その分子内コンプレックスは会合し、会合体中でピレン環は対面的相互作用によりエキシマーを形成することが明らかとなった。1__-がpH12.5以上でエキシマー蛍光を消失し、モノマー蛍光のみを示すようになることから、この会合体が二級水酸基側で相互接触する構造を有することが明らかとなった。二級位修飾体では、ピレン環はγ-CD空孔内に浅くしか抱接されず、分子会合の形成は困難であった。2個の9-アントラセンカルボン酸残基をγ-CDを構成するAB,AC,AD,AEグルコース部位に有する修飾体は、アントラセン光二重化により、AB,ACが不安定な光二重体を与え、AD,AEが安定な光二重体を与えた。通常生成しないシス光二重体がACで生成した点は、γ-CDのテンプレート効果の有効性を示している。1-アントラセンカルボン酸残基を有する同様の修飾体を合成し、光二重化を行ったところ、可能な4種類の光二重体のうちAB,ACはsyn-head-head,AD,AEはanti-head-headの二量体を与えた。かくして、2個の反応性残基の配向の角度を制御できる本法は、γ-CDテンプレート法として、反応の立体化学を制御する新手法となることが明らかとなった。
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