修飾残基として、フェロセン、ナフタリン、アントラセン、ピレンを有するγ-シクロデキストリン(γ-CD)を合成した。ゲスト包接に際し、フェロセンは空孔外にナフタレンは空孔内に位置を移動させた。アントラセンやピレンのような大きな芳香環を有するγ-CDは、会合体を形成した。ピレン修飾γ-CDは、会合体中でピレンのエキシマーを形成する。ゲストを添加すると会合体は解離し、1:1ホスト・ゲストコンプレックスに変化する。この時、エキシマー蛍光は消失し、モノマー蛍光が現れるので、この系は有機化合物検出のセンサーとして用いることができる。多くの化合物について検討した結果、ステロイド化合物の高感度、高選択的検出に特に有効であることが判明した。また、芳香環のサイズが異なるナフタレン、アントラセン、ピレン修飾γ-CDを比較すると、ゲスト結合能力の大きな差異が観察され、スペーサー・サイズの変化によるゲスト結合の調節はほぼ達成されていることが確認された。なお、本研究課題に関連して、2個の修飾残基を有するγ-CDについてコンプレックス形成の検討を行なった。ナフタレン、アントラセンいずれの場合も、ゲスト不在下で安定な分子内コンプレックスを形成しており、外部ゲストに対する包接能力は低下していた。また、γ-CDのAB、AC、AD、AEのグルコースに9-アントラセンカルボン酸残基を有する化合物を用いて検討したところ、アントラセンの対面的相互作用が困難なAC体が不安定な分子内コンプレックスを形成し、ゲスト包接は容易であることが判明した。アントラセンの光二量化をこれからの系で行なうと、AB、ACは不安定な光二量体を生成しフォトクロミズム系となった。AD、AEでは安定な光二量体が生成した。なお、二量体の立体化学はABはシス、他はトランスとなった。通常生成しないシスが得られた点は、この系の合成手法としての有用性を示唆する。
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