長鎖の炭化水素鎖をもつ界面活性クラウンエーテル(18-【OCH_2】-18Crown6)を主に使用し、その気-水界面や油-水界面での単分子膜による膜物性の測定や、リン脂質とクラウンエーテルから成る混合ベシクルを試料に用いた実験から次のような結論を得た。 1)界面活性クラウンエーテルの気-水界面上で膜圧(π)対面積(A)曲線を描くと、ある膜面積(A=100〜120【A^2】/分子)でπの折れ曲がりが現われる。これは水面に平行に並んだクラウン環の環面が圧の増加でその環面を水面より立ち上げた形態に変化するためである。 2)18-【OCH_2】-18Crown6単分子膜の表面電位に与える各種金属イオンの効果は【Ba^(2+)】>【K^+】>【Na^+】>【Ca^(2+)】の順となり、これはバルク中での錯形成能の順序に対応している。 3)油-水界面上での長鎖クラウンエーテルのπ-A曲線の形状は油の種類、特に油の極性によって大きく変化する。極性の高い油を用いた場合は膜を圧縮してもπ-値の上昇は認められない。これは界面に吸着したクラウンエーテルが圧縮によって再びバルク中へ溶出するためである。 4)油-水界面上の長鎖クラウンエーテル単分子膜の膜電位は、油相中のクラウンエーテルの濃度や水溶液中のアルカリ金属イオンの濃度で変化し、その変化率はバルク中の錯形成定数の大小に比例する。同様な傾向が同系で作製したエマルションの電気泳動測定からも認められた。 5)リン脂質にクラウンエーテルを混入させたベシクルを作製し、そのゼーター電位を測定すると、錯形成能の大きい電解質溶液中ではベシクルの電位が負から正符号に逆転するが、錯形成能の小さい電解質溶液中では電位の反転は起こらない。
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