典形的なイオノホアとして機能する18-Crown-6基をもつ一連の化合物は、膜表面に吸着してその表面で種々な金属イオンと選択的に錯形成することが知られている。本研究では金属イオンや金属イオンと錯形成したクラウンエーテル化合物の吸着により、脂質膜-水溶液界面の電位構造のプロフィールが如何に変化するかを同組成のリン脂質ベシクルのゼーター電位測定及び脂質単分子膜の表面電位測定を組合せることにより検討した。その結果 1) 金属イオン及び金属イオンを錯形成したクラウンエーテル化合物の吸着で形成される膜表面の電気二重層はSternの二重層モデルでよく説明される。 2) この膜電位測定法の応用により膜表面でのクラウンエーテルへの各金属イオンの錯安定度定数が計算できる。 3) 金属イオンとクラウンエーテル化合物は吸着に際し、膜表面電位を介在させた共同作用を直し、互いに影響を及ぼし合いながら吸着することが解った。 さらに本研究では種々な割合でクラウンエーテル化合物を混入させリン脂質ベシクルを調製し、いろいろな塩溶液中で凝集に対する安定性を調べた。その結果混合化で約10:1の割合までクラウンエーテル化合物過剰の混合ベシクルの調製の可能であることが解った。また、得られた混合ベシクルの臨界凝集濃(C.C.C.)を測定した所、Ba^<2+>>Ca^<2+>、K^+>Lu^+、R-Mt_3^+>RN^+(CH_3)_3というクラウンエーテル化合物のイオン選択結合能に対応した安定性が認められ、上記の方法でイオン結合選択性をもつベシクルの調製が可能であることが解った。
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