今年度は、実験計画に基づき界面活性物質混合ミセル溶液系の物理化学的研究及び界面活性物質液晶と水構造に関する物理化学的研究を行なったところ、以下の様な5つに大別される結果を得た。 1.アニオン(SDS)-非イオン界面活性剤混合ミセル水溶液でアゾ型油溶染料(4-OH)を可溶化すると、混合する界面活性剤の組み合せにより混合ミセル内で、その染料が退色する事を見い出した。つまり、混合ミセルを形成している界面活性剤同士の親水基間相互作用により、パリセード層にトラップされている水分子の振動エネルギーが減少し、結果として生じた長寿命の一重項酸素がヒドラゾ構造(互変異性体)のアゾ基のβ位を功撃する事により生じた。さらに、親水基間相互作用は、界面活性剤の構造と密接に関係する事が分かった。2.混合ミセル形成に及ぼす非イオン界面活性剤の影響は、アルキル鎖長の長い場合あるいはポリオキシエチレン鎖長の短かい場合の方が大であった。3.両性界面活性剤(DMLL)にSDSを混合すると、その水和固体の溶解温度が低下し、あるモル分率範囲で0℃以下となったが、カルシウムイオンの存在により上昇し、ある組成比において分子間化合物を形成するため極大値を示した。 4.DSC及び偏光顕微鏡による測定から、用いた疎水基の異なるレシチンは、いずれの場合もコアゲル相からゲル相への転移(Tgel)とゲル相から液晶相への転移(TC)が認められた。このTgel転移は、レシチン疎水部に関与しその疎水基の増加に伴いエンタルピー変化も増加した。一方、Tgel転移は飽和に達した層間水に関与し疎水基の変化に依存せず一定であった。また、生成した液晶の構造は、レシチンの濃度増加に伴い、ミエリン構造からラメラ型へと変化した。 5.イソタコの測定を行ない、界面活性剤単分散相と会合相とを界面電気的に分離する事ができ、ミセル形成濃度及び会合数を求める事ができた。
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