研究概要 |
1)石炭液化油は極めて複雑な成分の混合物であるので、この化学構造の究明には、主要な構造部分を (1)芳香環数(Ra) (2)芳香環に縮合したナフテン環数(Rn) (3)これらの環構造に置換するアルキル基炭素数(Cal) の各々で構造持徴を把握するのが適当である。我々はこの概念に基づいて、これ迄に液化油の″Ra-Rn-Calダイヤグラム″による化学構造の表示法を提唱し、これによる特性化を試みてきた。本研究ではヒドロ芳香族構造を脱水素反応による化学的手法に基づいて、既往のヒドロ芳香族構造に関する知見を実証することを目的としている。 2)石炭液化油試料は住友金属工業(株)1屯1日PDU装置によって製造された液化油の軽質留分である。これを【NH_2】カラムのHPLCによって化合物クラス毎に分離し、芳香環数を揃えた各フラクションを得た。Fr-M(1環芳香族類)のPd-Ca【CO_3】触媒を用いた脱水素反応生成物を再びHPLCによって化合物クラス毎に分離すると、2環(Fr-D),3,4環(Fr-T)および多環(Fr-PP)芳香族類の生成が認められた。反応収率は72%であり、この化合物クラスの各収率は、Fr-M:22.5%,D:25.0%,T:3.8%,PP:3.9%(Fr-M試料基準)であった。Fr-Mを脱水素して得られた各化合物クラスについて、MSスペクトル解析によって生成物の芳香環数を解析した。Fr-M-D(Fr-Mの脱水素生成物D)でナフタレン,アセナフテン,モノナフテノナフタレンの各同族体が、Fr-M-Tではアントラセン/フエナントレン同族体の生成が確認された。脱水素反応前后の芳香環数の変化から、Fr-Mにはモノ-およびジナフテノベンゼン類の存在が確証された。 3)昭和62年度では1,2,3,多環芳香族類について、これらのヒドロ芳香族化合物の化学構造を究明し、併せて既往のRa-Rn-Clダイヤグラムの結果と比較して化学構造を解明する。
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