研究概要 |
石炭液化油は, 1)種々の芳香属環構造, 2)これに宿合するナフテン環構造(ヒドロ芳香属環), 3)これら環構造に置換するアルキル基, 4)官能基の各構造要素からなる. 報告者らはこれ迄に(1)および(2)を化合物タイプ(芳香環およびナフテン環数)として構造解析を行なう方法, およびこの解析結果の表示法を提案してきた. しかし, この方法ではヒドロ芳香環の絶体構造の決定には至らず, 分子量が同じで異なる環構造を持つ異性体環の区別が難かしい. そこで本研究ではヒドロ芳香環のPα-CaCO_3触媒による脱水素反応を適用して, 生成した多環芳香属化合物のGC-MS分析からヒドロ芳香属化合物の化学構造を究明することを目標とした. 昭和61年度では, 住友金属工業(株)PDUによって製造された石炭液化油の軽質留分を試料とし, 脱水素反応の予備的実験を実施した. HPLCで分別した化合物クラスのFr-M(1環芳香属化合物類)の脱水素反応を行ない, この反応生成物を再びHPLCによって芳香化クラス毎に分離すると, Fr-Mの他にFr-D(2環), Fr-T(3, 4環)およびFr-PP(多環芳香族類)の生成が認められ, これよりFr-M中にモノー, ジー, トリナフテノベンゼン類の存在が実証された. 昭和62年度は前年度の研究結果を踏まえて, SRC-IIおよび赤平炭液化オイル分を試料とした. ナフタレン型2環芳香族化合物クラス(Fr-D1)について脱水素反応を行ない, ヒドロ芳香族構造を明らかにした. SRC-IIはテトラヒドロアンスラセン類は僅少であり, 大部分は5員環ナフテン型のアセナフテンおよびジナフテノナフタレン類である. これに対して, 赤平炭液化油オイル分は6員環ナフテノナフタレン類, ジナフテノナフタレン類のヒドロ芳香族成分が主成分である. 今後はヒドロ芳香族化合物のGC-MSによって異性体の環構造の究明をねらう.
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