研究概要 |
本研究では新しいフッ素化剤, 1, 1, 2, 3, 3, 3-ヘキサフルオロプロピルジエチルアミン(石川試薬, 以下PPDAと略記する)を用いて種々のタイプのアルコール類のフッ素化を行い, またその応用についても検討した. テルペンアルコール, 脂肪アルコール, ハロゲンアルコールなどの第一アルコールとPPDAの反応からは, 相当するフッ化物と2, 3, 3, 3-テトラフルオロプロピルエステルの混合物を好収率で得た. グリセリン, 1, 3-プロパンジオール, ペンタエリスリトールのような多価アルコールからは, PPDAが水酸基に付加した形のジオキサン型の環状化合物が生成した. W-ヒドロキシ脂肪酸エステル, エチレングリコールのモノエステルのようなヒドロキシエステルからは相当するフッ化物が得られた. なお, マンデル酸エステルのような不斉中心に結合している水酸基を持つヒドロキシエステルをフッ素することにより, 光学活性モノフルオロエステルを新たに合成することができた. また, 本反応はS_N2反応であることも確かめた. 前述のフッ素化物の応用として水溶性切削油添加剤, 生理活性物質としての効果を検討した. 水溶性切削油添加剤としては, W-フルオロウンデカン酸のようなW-フルオロ高級脂肪酸のトリエタノールアミン塩の水溶液はすぐれた錆止め性を, またベンゾイルオキシエチル=2, 3, 3, 3-テトラフルオロプロピオネイトはスペントクーラントに対してすぐれた抗菌性を示した. 生理活性試験としてゴキブリに対する殺虫テスト, 忌避テスト, 誘引テストなどを試みたが, けんちょな生理活性は認められなかった. しかし, リシノール酸エチルのモノフッ素化物は家ばえに対してかなりの殺虫性を示すことを新たに知った.
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