ZnSの光触媒酸化還元反応としてプロピルアミンを基質とする系とアセトアルデヒドを基質とする系を選び、触媒活性に及ぼすZnS調製温度の影響について以下の結果をえた。 1.硫酸亜鉛、硫化ナトリウム各水溶液を用い0℃で調製したZnS(ZnS-Oとする)が、N-プロピリデンプロピルアミンを経由するジプロピルアミンへの選択的光還元および、アセトアルデヒドのエタノールへの選択的光還元に有効である。 2.それを100℃10分間加熱処理して得たZnS(ZnS-100とする)では、両反応系で水の還元水素発生が優先し、特にプロピルアミンの系では、N-プロピリデンプロピルアミンがジプロピルアミンに還元されることなく副生した。 3.コロイドシリカに分散させた各ZnSの発光スペクトルを測定したところ、ZnS-Oではλmaxが340nmと430nmに観測され、ZnS-100では340nmと450nmに観測された。ZnS-0の吸収スペクトルと450nm発光の励起スペクトルが、ZnS-100のそれよりもわずかに短波長側にシフトしていることから、ZnS-0にサイズ量子化効果がより強く発現しているものと解釈した。 4.発光寿命を測定したところ、430nmの発光寿命は全く同じであったが、308nm光励起の350nm発光の寿命はほぼ1次減衰すると共にZnS-0では23ns、ZnS-100では17nsの寿命を有していることが判明した。ZnS-0のバンド間発光の寿命がより長いことは、伝導帯の励起電子の寿命が長く、プロトンまたは水の還元ポテンシャルよりもよりネガティブ側に還元電位をもつ有機基質の還元に有利に働くものと解釈した。 5.アセトアルデヒドの重水存在下の反応では、アルデヒド水素が反応初期に重水素と置換することを認め、ZnS表面における酸化還元反応は可逆的であることが示唆された。
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