研究概要 |
1.シクロペント[a]アセナフチレニドイオン類(【I】)の新規合成:アニオン【I】の7,9-ジ-及び7,8,9-トリフェニル置換体(Ia及びIb)を深赤色溶液として新たに合成し、【^1H】及び【^(13)C】NMR,電子スペクトルにより同定した。特にIbについては【Ph_3】P=【N^+】=P【Ph_3】を対カチオンとする暗赤褐色固体として単離した。さらにアニオン前駆体の炭化水素のpKa値を測定しIa(14.0)、Ib(13.9)共にシクロペンタジエニドイオンより1pK単位以上安定化していることが示された。またCV法による電気化学的測定の結果、Ia,Ib共に-0.57V vs Ag/【Ag^+】にIaは不可逆Ibは可逆的な一電子酸化を受けることが認められた。 2.アニオンIa,Ibと炭素陽イオン類との反応:Ia,Ib及び類似構造をもつアニオン種とトリチルカチオン及び各種のヒュッケル系安定炭素陽イオンとの反応を行ない、反応様式(共有結合生成・電子移動等)がアニオンのHOMOとカチオンのLUMOエネルギー準位の関係ならびに立体障害などの構造要素により支配されることを明らかにした。 3.交叉共役型アニオン類の新規合成:過剰のアニオンIaをトリス(ジメチルアミノ)トリメチレンメタンジカチオンと反応させ、Iaユニットが2個結合した交叉共役型エナミンを深赤紫色結晶として合成単離したが、Iaユニットが3個結合した交叉共役型アニオンの生成には至らなかった。一方、Iaより熱力学的には不安定なジベンゾフルオレニドアニオンを3個1,3,4-トリメチレンシクロペンタジエンに結合させることにより、深青色の交叉共役型アニオンを新たに合成していた。このアニオンは前駆体炭化水素のpKa値(3.3)が示すように極めて安定であり、今後はさらにアニオンIaを同様に5員環に交叉共役的に結合させることにより、さらに安定なアニオンを合成する予定である。
|