研究概要 |
アミノ酸糖体抗生物質は臨床上重要な抗生物質群であり、その構造と活性との相関について現在にいたるまで数多くの研究が行なわれてきた。 本研究は、この群の最も簡単な抗生物質の一つであるトレハロサミンに着目し、これに新しいタイプの化学修飾をほどこし構造活性相関を調べることを目的としている。すなわちトレハロサミンを構成しているD-グルコサミンとD-グルコースの一方をそれぞれ擬似糖質、糖のピラノース環の酸素原子のかわりにメチレン基をもつ分岐シクリトールで置き換えた擬似二糖類を合成し、それらの生物活性を調べた。先ず合成の容易な、D-グルコサミンとD-マンノースとがα(1→1)結合した非還元性二糖抗生物質を合成した。保護化した擬似グルコサミンとペンタベンゾイルα-マンノシルグロミドとの縮合反応によって、擬似α-グルコサミンとα-D-マンノースとからなる擬似二糖を合成した。つぎに、保護化した擬似α-マンノースとグルコサミンハロゲン化物との反応によって,α-グルコサミンと擬似α-マンノースでできた擬似二糖を得た。これらのうち、天然の抗生物質と同一の立体配置をもつ擬似糖類似体は、検定に供した三種の微生物に対して抗菌活性を示さないことがわかった。トレハロサミンの擬似類似体として、本年度はα-グルコサミンと擬似α-グルコースとの擬似二糖を同様の方法で合成した。天然物に対応するものは、肺炎菌に対し新抗生物質ネオトレハロサジアミンと比べ約1/4の活性を示すことがわかった。 昭和62年度に、残るグルコサミン残基を擬似糖に置き換えた擬似二糖を合成し、前者と活性を比較し、抗菌活性に及ぼすピラノース環構造の役割を明らかにする計画である。また、結果によってはネオトレハロサジアミンの擬似二糖を合成し、それらの抗菌活性を調べる。
|