研究概要 |
前年度において, トレハロサミンのD-グルコース部を擬似D-グルコースに置き換えた類似体が, 天然物に比べ約25%の活性を保持していることを明らかにした. そこで, 現在, D-グルコサミン部を擬似糖にする計画で合成研究を進めている. 擬似糖とD-グルコースとの結合部が, 隣接するシスアミノ基の立体電子的障害のため, グルコシド化反応に対し極めて不活性化されていることが分かった. したがって, アミノ基を前駆体のアジド基にした化合物をつくり, グリコシド結合の形成を容易とし, 生成物を還元してアミンにする経路を現在検討している. 一方, トレハロサミンに関連し, これら一群の化合物合成の基礎研究として, アミノ基を欠いた二種, すなわち擬似トレハロースの理論上可能な8種の異性体をすべて合成した. これらの絶対構造は, 500MHz核磁気共鳴スペクトルによって決定した. いずれの異性体も, トレハラーゼに対する酵素阻害活性を示さなかった. しかし, アミラーゼに対する基質として, マルトースに要求される必要な官能基の存在ならびに立体配置をいずれも満足する擬似トレハロース異性体が働くことが明らかとされた. これによって, アミラーゼの糖鎖加水分解における機序がよりよく理解されることになった.
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