1.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の脱HF反応によるフッ素化ポリアセチレン(PFA)の合成。 PVDFの脱HF反応を種々の条件下で検討した。有機塩基のDBUおよびKOH-i-PrOH系を用いた場合に大きい反応速度が得られたが、一部置換反応を併発するため共役ポリエン構造に不規則性が存在すると推定された。これに対してアルカリ水溶液中で第四アンモニアム塩を用いた相間移動触媒(PTC)系の場合は、反応速度が上記の系より小さいが、副反応が少なく、共役鎖の長いPFAが得られることが分光学的測定から明らかになった。 一方、成膜条件と構造および反応速度の関係を検討した。DMAからのキヤスト膜と押出し成形膜はそれぞれ【I】(β)型および【II】(α)型のコンホメーションをとり、DMFからのキャスト膜は【I】+【II】型であった。キャスト膜は押出し成形膜と比較して反応速度が著しく大きいが、これらから得られるPFAの構造には大きい差異が見られなかった。 2.PFAのドーピングと導電性 上記の方法で合成したPFAは、ヨウ素の気相ドーピングにより導電率が著しく上昇し、【10^(-3)】〜【10^(-4)】S【cm^(-1)】のオーダーに達した。導電率の温度依存性は半導体的特徴を示し、これから求めたバンドギャップは0.8eVであった。成膜条件と導電率との間に明瞭な関係は見出されなかったが、原料フイルムの延伸により結晶度とともに導電率も向上し、さらに延伸方向とその垂直方向に導電率の異方向が見出された。一方この導電率は測定雰囲気に非常に敏感で、湿度、有機物蒸気の存在により大きく変化することが見出された。現在この導電機構、加熱による脱HF反応、光電変換機能について検討している。
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