研究概要 |
1.共重合体の組成分布を迅速・正確に決定するために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることは、1979年にわれわれが始めて以来、次第に盛んになっている。しかし、その分離の機構は必ずしも明確になっていない。本研究の目的は、吸脱着と相分離の2つの機構が、HPLCによる組成分別にどのように寄与しているかを解明することにある。 2.低重合率の組成の異るスチレン-メタクリル酸メチル共重合体4種とその内の1種を分子量分別した区分4種を試料として用い、シリカゲルのシラノール基を(1)【NH_2】,(2)CNおよび(3)フェニル基で置換したものを充填剤としたカラムを用いて、相分離的にはスチレン含率の多い成分から溶出する(A)テトラヒドロフラン(THF)/シクロヘキサン系と、スチレン含率の少ない成分から溶出する(B)THF/アセトニトリル系を溶離剤として、直線的なグラジエントをかけて、計6組のケースについて溶離を試みた。 3.カラム(1)および(2)と溶媒系(A)の組み合せと、カラム(3)と溶媒系(B)の組み合せにおいては、組成分別が郊果的に行われ、4種の組成の異る試料が明確に4つのピークに分れ、同組成で分子量の異る区分は、同一溶出位置を示し、それ以外の組み合せ((1)および(2)と(B),(3)と(A))では、4つの試料は分離されなかった。 以上の結果は、前者の組み合せではスチレン含率の高いものから、後者の組み合せではスチレン含率の低いものから溶出する方向に、相分離的にも吸脱着的にも一致して働くときにのみ、郊果的な分離が起ることを、意味している。また、分子量の異る区分が同一の溶出位置を示したこと、未分別試料が広い分子量分布を持っているにもかかわらず、シャープなピークを示したことは、分離における吸脱着機構の重要性を示していると言えよう。
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