研究概要 |
ミクロ導電パターンを有する高分子ハイブリッド膜の調製手法とその電気的特性に関しては昭和61年度及び62年度第1四半期までに検討を終了したので, 本年度はエレクトロクロミックディスプレイへの発展を意図して, 希土類ジフタロシアニン系(R8PC2M)着脱色物質の合成とそのエレクトロミック特性を中心に検討した. 中心金属には, 一般の重希土類を選び, R=H, t-Bu, n-C3H7O, neo-C5H7Oの各種金属錯体を合成した. R=Hでは, 溶解性に乏しく良好な膜状試料が得られなかったが, その他の錯体では酸化インジウムスズネサガラス(ITO)等の電極と組合せたエレクトロミック素子が作成できた. 置換基がアルコキシ基のとき, 酸化還元に基づくエレクトロクロミズムは卑な電位で生起し, そのため酸化分解などの副反応が起こりにくく長期的な安定性にすぐれることが明らかとなった. また, これら置換基の導入により溶解性が向上してESR, NMRなどのスペクトル的分析が可能になった結果, 従来各種議論が提出されて統一見解が得られていない錯体の基底状態に関し, 中性ラジカルであることを確認した. 今後, ミクロ導電パターンと組合せて, 特定形状の描画が可能な多色エレクトロクロミックディスプレイを検討する予定である.
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