ナフィオンなどの親疎水性高合子電解質膜が形成するミクロ相分離構造の円筒状イオンドメインに、ピロール、チオフェン、セレノフェンなどのヘテロ五員環化合物を電解挿入重合して、相当する円筒状導電カラムを有するミクロ導電パターン高分子ハイブリッド膜を作成する手法を確立した。この高分子ハイブリッド膜は、膜厚方向の導電性が10^<0〜-3>S/cmであり、かつ面内方向の導電性がそれよりも3桁低い異方電導性を発現する。この特徴を利用し、径が10^1μmのドットを単位とする表示素子等への展開を試みた。 希上類ジフタロシアニン(MPc_2)は単一物質で多色エレクトロクロミズムが可能であるが、溶解性に乏しいため膜形成ができない。そこで種々の置換基を有する可溶性MPc_2を合成し、先の高分子ハイブリッド膜と組合せてエレクトロクロミック素子を作成することにした。置換基効果を検討した結果、MPc_2ー(CH_3O)_4(tーBu)_4錯体が最も良好であることを見出し、(a)高分子ハイブリッド膜上へのキャスト、(b)高分子ハイブリッド膜とMPc_2ーLB膜の圧着、(c)高分子ハイブリッド膜上へのMPc_2ーLB膜形成、の三手法を試みた。ミクロ導電パターンの導電カラム孔径が10μm程度であるとき、観察されたエレクトロクロミズムの範囲は、(a)40μmーφ、(b)30μmーφ、(c)25μmーφであり、膜の不均一性によるにじみ現象が認められた。解像度をこれ以上に向上させるには、膜の凹凸を±5%以内に抑えるか、あるいは導電カラムそのものの孔径を一桁小さくする必要があると考えられる。
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