研究概要 |
1)前駆モノマーである4-メチル-4-ビニル-2,2´-ビピリジンを合成し、その単独重合ならびにスチレン等との共重合により得られた高分子を錯体化することで、種々組成のルテニウムトリスビピリジル錯体ならびにルテニウムビスジカルボキシビピリジルビピリジル錯体導入高分子を合成した。また電子伝達基(リレー基)の導入効果を検討するため、4-ビニルピリジン-スチレン共重合体に、高分子反応により、ルテニウム錯体ならびにビオローゲンを導入した高分子も合わせ合成した。 2)これら光電子伝達機能高分子の溶液系ならびに膜系における光物性を、その発光減衰の単一光量子計測ならびに多指数関数解析により検討を加え、また、その電子伝達特性を電極上にキャストした膜系で検討した。その結果、溶液系では長寿命の発光が観測される一方、膜系では、ルテニウム錯体間濃度消光に起因する励起寿命の低下が観測された。この寿命低下は、光不活性高分子との混合膜系で回復されるが、その場合、同時に電子伝達特性の低下が起き、オーバーオールの光電子伝達効率(増感効率)に対する膜組成の最適化が必要となることが示された。 3)光電子伝達機能を直接的に評価するため、白金化酸化チタン粉末への被覆による可視光増感水素生成系の検討を同時に進めた。上記高分子の単層被覆では、リガンドであるビピリジンにカルボキシル基を導入したものが、酸化チタン表面への吸着特性が向上するため、高い増感効率を示した。一方、ビオローゲン基導入効果は、導入による高分子の親水性増大と大きく関わり、導入量の最適化を図る必要性が明らかとなった。 今後、ルテニウム錯体のリガンド構造ならびに高分子中への錯体導入量の最適化を図るとともに、電子リレー基に濃度勾配を導入した多層構造化を検討していく所存である。
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