研究概要 |
ブタジエンをn-ブチルリチウムで低重合し、l-ブロモペンタンで停止を行い、ブタジエンオリゴマーを得た。1および2量体をGPCにより分取した後、スチレンゲルを固定相とし、イソオクタンを移動相とするHPLCにより1量体はシス,トランス,1,2の3種の異性体に、2量体はこれら3種の異性構造の組み合わさった10種の異性体に分離した。1,2量体の構造をH-1およびC-13NMRにより決定した。HPLCでは両オリゴマーは1,2,トランス,シス構造の多いものから順に溶出することが分った。これらのオリゴマーのC-13NMRの化学シフトを基に、ポリブタジエン中でシス,トランス,および1,2構造がつながった場合予側される各種飽和炭素の化学シフトを計算した。 ブチルリチウム(【I】),ラジカル開始剤(【II】),コバルト触媒(【III】)を用い異性構造の割合の異なるポリブタジエンを合成し、C-13NMRスペクトルを測定した。また、DEPT測定によりメチンおよびメチレン炭素の区別を行った。化学シフトの計算値と実測値の比較,シグナル強度と組成の関係,DEPT測定の結果を考慮にいれ、ポリブタジエンの飽和炭素のシグナル帰属を行った。化学シフトの計算値と実測値の差は0.2ppm以下であり、シグナル帰属におけるオリゴマーの有用性が確認された。この帰属を基に、メチレン炭素シグナルを用い、各種ポリブタジエンについてシス,トランス,1.2構造のダイヤド連鎖分布を求めた。いずれの触媒を用いても、ポリマー中にはシス,トランス,1.2構造はランダムに分布しており、触媒【I】および【II】によるポリマーでは1.2構造同士はメソダイアドがほぼ50%で、【III】によるポリマーではメソダイアドが85-90%でつながっていることが分かった。また、頭-頭や尾-尾結合はほとんど存在しないことが分かった。
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